武田直哉の日常

2/3
前へ
/29ページ
次へ
 授業は度々豚塚の妨害にあって集中できない。  ちょっとだけ教室に入ってきてまたすぐ出て行く……あれで出席しているつもりなのだろう。  家に帰ったら帰ったで居心地が悪い。  だから放課後は図書館で過ごしている。集中できるというより、ここならあいつの邪魔も入らないし、空気も重くないので落ち着ける。  祐介も雅美も一緒に図書館にいる。  それぞれに家に帰りづらい状況がある。  祐介も毎日疲れたような表情をしているし、雅美にいたってはやせ細っていて心配になる。  でも、わざわざ問いただしたりはしない。  たぶん、だから居心地がいいんだろうと思う。  俺は勉強しているし、雅美は古い文庫本を読んでいる。祐介は科学雑誌の宇宙特集を眺めている。それぞれ別々の事をしていても、なんとなく繋がっている。  チャイムが鳴った。 「さて、帰るか」  俺がそういうと、二人は同時に溜め息を吐いて片付け始める。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加