物語を止めないで

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 こんなにも美しく、こんなにも愛情にあふれる少年を、彼らはもはや、本能に従って恐れ忌避するなどしたくなかったのだ。 「元老院はなくなり、跡地は公園と記念墓碑になっています。ノクターンと、ギャスパー様が斬り伏せた元老院の竜たちの」 「アリアが建てたのですか」 「ええ。優しい主君ですから…。ノクターンはともかく、元老院の竜らにも国を憂いて行動していた者がいたのだろうと、それならご自分と同じだとおっしゃって、主君は私財を投じて墓碑を建てたのです」  アリアらしい結末に、ギャスパーは微笑む。自分の愛する相手はそんな男だったと思い出して、胸が詰まりそうになったのだ。  結局アリアは、唯一血のつながるノクターンに手出しをしなかった。彼は何より先にギャスパーの命を案じた。あのノクターンは、アリアの壊した元老院の建物のせいで、太陽に焼かれて死んだのだ。 「そういえば、我が祖国ヒューマリアはどうなりました?弱小国家ですが、まだ残っていますでしょうか」  ギャスパーが半ば本気で心配してそう聞くと、カノンは言った。その声はどこか嬉しそうだった。     
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