君の心をどうか見せて

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「あなたを愛する権利をです、陛下」  沈黙が落ちた。星々すらも瞬くのをやめてしまったような、そんな静かな時間だ。  ギャスパーの手に触れるアリアの爪が、だんだんとやわらかくなっていくのを、ギャスパーはその指先で感じた。縮んで形が変わって、それは何度も触れた、アリアの小さな白い手へと戻っていく。   次に聞いた声は、ギャスパーが愛してやまない、よく通る透明な声だった。 「僕は一生愛を知らないんだと思っていた。なのにあなたは本当に、もう…」 「いつだって惚れた方が負けですからね。なりふり構わず、あなたに言葉を尽くしてしまいますよ」 「わかった。…目を開けて」  どこか諦めたような、そして笑いの滲むようなアリアの言葉にギャスパーが目を開けたのと、チュッと音を立ててアリアの唇が触れたのは同時だった。アリアからキスをもらったことは、今夜が初めてだったのだ。 「え、」 「いい?言い出したのはギャスパーだ。だから権利をあげるよ。僕のこと、せめて短い寿命が来るまではちゃんと見ててくれないと承知しないんだから」  少年の体に戻ったアリアは、フイッとそっぽを向いて言った。腕組みしてふん反りかえっているのが似合わなくて、ギャスパーはパチクリと瞬きをした。     
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