君の心をどうか見せて

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 何かを吹っ切ったようなその顔があんまり可愛らしくて、何かを脱ぎ捨てたようなその体があんまり頼もしくて、ギャスパーの体はくずおれる。恋人がそんな風に勝気なことを言うところを、ギャスパーは予想もしていなかった。初めて見る一面に、彼はまた、恋に落ちてしまうのだ。 「格好つかないな…」 「いつだってあなたは格好いいよ」  こんなにも自由に言葉を発したことがあったろうかと、アリアはこぼれ出る笑みを抑えられない。  全部ギャスパーのおかげだった。こんな自由をくれたのは、開放感をくれたのは、ギャスパーの発した全ての言葉たちだった。身勝手で不器用で、時に鋭くアリアのトラウマとコンプレックスを刺した言葉たち。それらはすべて、ただ愛によってのみ作られていて、カラカラだったアリアの心を暴き、同時に潤していった。 「全部、あなたのおかげなんだ。ギャスパー・キャロル、僕はあなたのことが好きだ」  今だったらなんでもできる気がした。だからアリアは、ずっと言いたくて、ずっと言えなかったことを言った。  アリアは額をギャスパーの額にくっつけて、彼に困った笑みを浮かべる。体が軽くなってしまって、どうしたらいいのかわからない。けれどギャスパーの皮膚に触れていたくてどうしようも無い。互いのまつ毛が触れそうなほど近かった。初めてその感情を言葉にしたアリアだったが、自然と口から出てきてしまったのだ。 「僕が欲しかったものを全部くれたあなたが言うことを、ちょっとは信じてみようって思ったんだよ」     
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