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彼が何を言おうとしているのか、ギャスパーはコンマ一秒で察した。こんな時だけ察しが良くなる自分が頼もしく、同時に嫌だったが、ギャスパーは食い気味に返事をしないようグッと我慢する。どんなに格好がつかない状況が続いていても、ここは意地だった。
「もし、僕がちゃんと目標を達成できたら、その…」
「…俺を朝まで、お部屋にお招きいただけるのですか?」
もじもじと言い淀むアリアを眺めているのも楽しかったのだが、何度も言う通りギャスパーもこれが初めての恋愛であるため、そのような余裕は一片も無かった。だから彼は助け舟を出した。助けたのは、彼自身の跳ねる心臓だ。
「そっ、そういうこと」
アリアの目にまた、不安そうな色が浮かぶ。
「僕、本当に服の下は鱗ばっかりで変な色してて、細いし、硬いし、まだ子供みたいだし…。きっと人間のギャスパーは気持ち悪いって、」
「思いませんよ。それに俺はまだ二十二歳だ。子供どころか赤子でしょう」
ギャスパーは冗談めかして言うが、言いたかったのはそんなことではないとアリアが頬を膨らませる。
「俺はあなただったらなんでもいいから、本当に楽しみです。いや、今夜はもうこの話はやめましょう。眠れなくなる」
「もうっ、馬鹿じゃないの!」
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