君の心をどうか見せて

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 アリアがバシンとギャスパーの背中を叩いた。照れが上乗せされた遠慮ないそれにギャスパーはうっと声を漏らすが、彼はこうしてアリアと話せるのが幸せで仕方がない。こんな風に、まるで距離がなくなってしまったような会話をする日は憧れだった。信頼関係が得られた気がして、ギャスパーは心がホワッと暖かくなる。  ガラスで守られた冬の星空の下、眠気に耐えられなくなってしまうまで恋人たちは笑いあった。理想を語って、冗談を言って、たまに抱きしめあって、そんな時間が幸福で幸福で、彼らは互いに互いの呼吸を確かめ合う。  自分を知り相手を求めるうちに、彼らの恋はどんどん鮮烈になる。出会いに目を覚まし、恋に命を吹き込まれたのは、二人とも同じだったのだ。  アリアが初めて老獪ノクターンに牙をむくと決意した舞台は二週間後に迫る王元会議。  城に集まる政務官、法務官、そして地方をよく知る赴任兵らを集め、彼らはノクターンにとどめを刺すために作戦を練ることとなる。  王城の竜らが忠誠を誓うのはアリアただ一人。きっかけは彼の体に流れる王家の血筋だとしても、そしていくら白竜に恐れを抱こうと、アリアの暮らす城に長く留まった者は、皆その少年王の本質を知っている。優しく、民思いで、臣下思いの王なのだ。彼を孤独に閉じ込めていたのはまぎれもない、彼を恐れ避けてしまう自らたちだったと、竜人らは長い時間の中で嫌という程わかっていた。そんな王の瞳が輝き意欲と理想の火が灯ったとなれば、気合を入れない者はない。     
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