彼らは牙に気づかない

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彼らは牙に気づかない

 由緒正しき王城と、五百年ほどの歴史『しか』持たない元老院を繋ぐ月一の集まり『王元会議』は、夜にしか開催されない。その訳を知るのは、元老院院長を務める黄金の竜ノクターンと彼にごく近しい者だけだ。  ノクターンの体はアリアの鱗を取り込んだおかげで、成長しきり同時に老いていない瞬間を切り取り、彼をその身体のまま留めてきた。しかしノクターンは、自らの肉体の限界が近いと、ここ数年で嫌という程感じている。  伝承通り、原始竜の鱗は万薬に違いない。ノクターンの身体の怪我は瞬時に治り、病をしたこともないからだ。そしてメッゾに指摘された通り、不老不死に似た効果もあるようだ。若いまま、老いないのだから。  しかし、それも完全ではない。アリアの体はその鱗を含めて、彼が昔幽閉されていた時に隅から隅まで調べられたことがある。ノクターンの指示に従った、アリアの命を否定した竜人たちの手によってだ。不死はやはり、不思議な鱗を持ってしてもアリアの生体を研究した竜らの言う通りありえないらしい。ノクターンはその身をもって、重い副作用に苦しんでいる。 「閣下、大丈夫でございますか」     
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