彼らは牙に気づかない

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「あの小童。何もできないくせに、急につけ上がるなんて。なぜ今更になって、アリアは私に歯向かう!?」  黙ったままの青年を腹いせに蹴り飛ばそうとして、ノクターンは失敗した。体から力が抜けて、寝台に倒れこむしかできなかったのだ。  理由は明白、彼は朝日を浴びてしまったからである。  月に一度の王城元老院会議、通称王元会議は、異例の延長を見せた。だから終了後、城から出ようとしたノクターンは東の陽光に体を突き刺されたのだ。  その会議は、王城から三十人、元老院から三十人の竜らが普段法廷として使われている城の地下に集まり、定例報告から来月の政治について話し合い意見を交換する、大事な会議である。  いつもなら、ノクターンが示した白書に則り、アリアに諸々サインを書かせるだけの形骸化した会議だ。それなのに、今夜は突然、アリアの態度が変わった。 「元老院には何の権限もない、だと…?」  アリアは開始直後、ノクターンの言葉を制して真っ先に言ったのだ。  元老院には何の権利もない。不文律ではあるがドラコルシアには何万年もの間で作られた法律があり、その中でも元老院などというものは予想されていない。  そもそも政治機関が分裂するなど、あってはならないことだと、アリアは淡々と言ってのけたのだ。     
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