彼らは牙に気づかない

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「あのメッゾの息子カノンに、アリアを変えられるはずもない。あやつはずっと、ただの木偶の坊だったから。となると、アリアをあんな風にした犯人はあの人間…」  苛立ったノクターンは爪を噛む。  カノンの名前が出て、青竜の青年のポーカーフェイスが一瞬くずれる。それを見もせずノクターンは言った。 「お前がメッゾの息子に気があることくらい、知っているよ」 「ノクターン閣下、」 「私には関係がないことだけどね。お前は思ったよりも役に立たないから、罰として彼を殺してやってもいいんだけど。それか老いぼれたメッゾかな」  青年が息を呑み動揺する気配を感じ取り、ノクターンは体を震わせて笑った。誰から見ても、彼はもはや異常だった。年をとるごとにその気質は苛烈さを増し、手に入れても手に入れても満足しないような生き様は、知る者にぞっとする恐怖を抱かせる。  そんな主人の様子に、青年は暴力を覚悟して、唇を震わせて初めて問うた。 「あなたは…あなたはなぜ、そんなに陛下を嫌うのです。血の繋がった孫ではありませんか!そこまでして王座が欲しいのですかっ…?」     
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