彼らは牙に気づかない

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 自らの息子をチルカ女王の婿に出し、外祖父となったノクターンはそこで満足するべきだった。その上息子を殺し、多産であるはずの竜人の卵を腐らせたとなっては、その異常性が垣間見える。アリアは幸か不幸か突然変異の先祖返りだったから、毒にも負けなかったのだろう。それらは噂にすぎなかったが、ノクターン以外にそんなことをやってのける竜人がいるはずもないのだ。  しかし彼は、アリアが生まれてからというもの、一層権力にこだわるようになったと青年は感じていた。 「愚問だ。私はもはや、王座など欲しくない」  ノクターンの返答は意外なもので、しかし彼が嘘をついているとも思えない青年は、底知れない主人にぶるっと体を震わす。しかし彼はすぐに、青年に答えをくれた。 「生まれたばかりのアリアを見た瞬間、私の体を焼いたのは興味だ」  青年は、日光を浴びたせいで体調悪そうにうずくまるノクターンの言葉を待った。興味など、青年は今までの彼から感じたことはない。あるのはただただ暴力的な狂気だと思っていたのに、今のノクターンはどこか弱々しく、青年は違和感に頭が痛くなりそうだった。 「原始竜を怖いと思ったことはない。私は遺伝子に欠陥があるのかもしれないね。…羨ましいと思ったんだよ。原始竜の、圧倒的な力を」  そんな発言に、広い地下室で青年は息を飲む。  ノクターンの精神までも、もはやアリアの鱗によって幼くなってしまったのではないかと彼は錯覚した。 「アリアは美しい。だから私は、彼の何もかもを奪うと決めたのだ」     
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