彼らは牙に気づかない

14/17
前へ
/228ページ
次へ
 仕事明けの緩やかな捜索に言葉はなかったが、それほど互いに不眠の疲れが蓄積していたのだ。アリアだけでも寝かせることができてよかった、と考える男たちだったが、そろそろ日も落ちて、二人の影はすっかり長く伸びている。二人だってかなり眠い。  もう一時間ほどアレグロを探し、不安げなカノンに付き添ってギャスパーは何をするでもなく歩いていた。 「そういえば、ですが。元老院の今後の動きにも警戒しなくてはなりませんね。俺が聞く限りノクターンというアリア陛下の祖父は随分、苛烈な思想を持っているとか。考えたくないですが、実力行使の可能性も見過ごせないのでしょう」  久しぶりに発されたギャスパーの言葉に、水路の橋から下を観察し青竜の姿を探していたカノンは顔を起こし口を開いた。 「ええ、残念ながら。私の父はノクターンを見張るために元老院に入っておりますが、もう体力が追いつかないとよく言っています。それにあの父は、陛下というよりも王家の血にしか興味が無い。一方、父より年上のノクターンはその見た目が若返ったまま一切変わらない。不気味な竜ですよ」  カノンはうんざりしたように言った。ギャスパーが会議中に姿を見たノクターンはその吊った大きな瞳がアリアにそっくりで、血を感じざるをえないその姿にギャスパーは驚いたものの、やはりその身から発せられる雰囲気とほんの青年にしか見えない容姿との差に驚き、言い知れぬ気持ち悪さを感じた。     
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加