彼らは牙に気づかない

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「兵は増やしているのですよね、アリア陛下をお護りするための」 「ええ、ギャスパー様がおっしゃった通りに。元老院からの竜人は、アリア陛下の寝室にたどり着けやしませんよ」  その言葉に、ギャスパーは少し安心したと同時に、やはりアリアのことが心配になる。彼はとてつもなく強い竜だとわかっているものの元老院を敵に回したことであるし、この先何が起きるのかギャスパーには見当もつかないのだ。最悪の展開に備えて、兵を増やしておくに越したことはない。 「先ほども言った通り、アリア陛下を支えなくてはならないのはこれからです。彼は才はあれどもやっぱり不慣れです。それは、俺の目から見ても明らかなほど」 「そうですね、主君は今まで内政にほとんど関わってこられなかったから。しっかりしなくては」  カノンは息を吸い、アリアの私室の方に引き返していくギャスパーに続いた。カノンや政務官たちの能力は申し分ないし、それにアリアの先導や復権が加わったならきっと政治はうまく回るだろう。ギャスパーにとって一番警戒すべきは、欲望に狂っているノクターンが凶弾を放つかもしれない、ということであった。     
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