彼らは牙に気づかない

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「そうだ、予算案の草案でしたら、俺にも何かお手伝いできると思いますよ。祖国の軍費の振り分けは、俺がやっていましたし」  未だキョロキョロとアレグロを探しているカノンに、ギャスパーは言った。祖国の軍は専守防衛がモットーで、暇だったこともあったから、器用なギャスパーは本当に様々な仕事を振り分けられたいたのだ。 「そっ、それは本当でしょうか!?ドラコルシア西地区のものだけでも、ご協力願いたいのですが…去年の税金歳入額と来年の歳出予想額は出ているので、それをもとに草案を組んでいただきたい。もちろん陛下が最優先なので、お時間のあるときに」  目を輝かせたカノンは、きっと猫の手も借りたいほどの仕事に追われていたのだろう。微笑みで返したギャスパーのクマもひどかったが、今休んでいいのはもはや戦いきったアリア一人である。 「ならば、陛下の寝室でやろうかな、資料だけ回収して、俺はアリア陛下のお部屋に向かいますね」  ギャスパーの言葉に、カノンはもちろん反論一つなく頷いた。近く結婚するであろう婚約者たちの仲がいいことに越したことはないし、ギャスパーとしても、元老院を刺激してしまった今、どんな安全地帯でアリアが寝ていたとはいえ、アリアをそばで護りたくてたまらないのだろう。     
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