彼らは皆戦場にいた

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 時刻は午前四時。まだ夜明け前である。  もぞもぞとギャスパーは、散々乱した上質なリネンの上で腕を動かし、見知った温もりを探す。しかしどんなに探ろうとも、目当ての細い体は見つからない。次第に、疲労と未だ解消されない睡眠不足に苛まれていたギャスパーははっきりと覚醒し、その目をいっぱいに見開いた。 「アリア…アリア?どこに」  体を起こす。暗い部屋に茶の目はすぐに慣れるが、恋人の姿が見当たらない。  ギャスパーは上裸のままベッドから跳ね起きた。そのまま絨毯が敷かれた床に足を下ろし、部屋と、もう一度ベッドを見る。  しかし何度見ても、部屋にアリアはいなかった。 「アリア、アリア陛下!どこにいるんです!」  そう叫んだ後にふとギャスパーは、いろんな体液で汚れたはずの体が綺麗に拭われていることに気がついて、嫌な予感に苛まれる。ソファを見ると、丁寧に畳まれたギャスパーのシャツがあった。しかしアリアの服はどこにも見当たらない。     
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