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悪い予感はよく当たる。なのに、その正体がわからずに、ギャスパーは唇を噛んだ。
唐突に、扉を叩く音がした。
ギャスパーはハッと気がついて、意味なく自分を責めることを中断した。もしかしたらアリアが帰ってきたのかもしれないと思ったが、彼が私室をノックするはずもないし、ギャスパーは望み少なにドアを開ける。
そこに立っていたのは、意外な相手だった。
「夜分遅くに失礼します、ギャスパー様。起きていらっしゃってよかった。…主君はこちらにもいらっしゃいませんか?」
長い黒髪の男、カノンのひそめられた声に、ギャスパーは驚いて目を剥く。
「あなたは、アリアがいなくなったことを知っているのですか!?」
カノンのアリアを探しているかのような言葉に、ギャスパーはそう問い返した。しかし得られた返答は絶望的で、ギャスパーの心臓は凍ってしまいそうになる。
「へ、陛下は、ここからいなくなられたのですか!?」
どうしよう、とカノンは言った。途端に混乱しそうになる二人は、このままでは何の進展もないとわかって、互いに息を整える。不安で爆発しそうなのは二人とも同じだったが、彼らは何とか落ち着いて、まずギャスパーから状況を説明した。
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