彼らは皆戦場にいた

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 王元会議の後、密かに城を抜けてノクターンを元老院の地下に送り届けた時。アレグロは怒り狂ったノクターンに、一つ命令を下された。  それはギャスパー・キャロルを殺すこと。  今まで王権奪還に興味を示してこなかったアリアを奮い立たせ、ノクターンの傀儡政権を壊そうとしているのはギャスパーだとノクターンは思って、容易にギャスパーの寝首を掻けるアレグロにそう命じたのだ。  だから王元会議の後アレグロがいなかったのだと、彼を探し回っていたカノンはようやく合点が行く。 「けれど私は、絶対にそんなことはできないと悟ったのです。それは、その、ギャスパー様がお強いからとか、ギャスパー様に申し訳ないからとかではなく…アリア陛下がようやく、本当の恋を知ったのを見てたから、それを壊すなんてことは絶対にしたくなかった」  カノンのことが好きでたまらない気持ちはきっと、アリアのギャスパーへの思慕と同じだろうと、アレグロは気付かざるを得なかった。だから、一生の内で出会えるかもわからないそんな恋人に恵まれたアリアの幸福を、邪魔したくはなかったのだ。  だから彼は、初めて大々的に、恐ろしいノクターンを裏切る決意をした。きっといずれノクターンに消されるとわかってなお、その衝動を止められなかった。     
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