彼らは皆戦場にいた

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「『今度は僕が守らなきゃ』そう言って、主君は寝室のドアを閉めた。私は思うのです。主君はきっと、この私を罰するためでなく、」 「…ええ。アリアはあなたを守るために、あなたをこの地下牢に隠した。きっとここは王城の一番深い場所でしょう。だから、アリアはあなたをノクターンの目から隠すためにっ…」  ギャスパーは左の腰にかかった剣の柄を力一杯握った。こうでもしないと、心に溜まった様々な感情が爆発して、ここに立っていることすらもどかしい。  アリアはきっと元老院にいる。これは確信だった。  彼の性格をよくわかっているギャスパーだから、アリアが何をしに行ったかすら想像できてしまうのだ。  民に尽くす本当の王になりたくてアリアは戦った。ギャスパーやカノンを始め多くの王城の竜らの力を借りて彼はようやく、最初の矢を放つことができたのに、アレグロの言う通り王位を退くなどしたくはなかっただろう。自らの夢と、それ以上に、周囲の尽力と期待をも潰してしまうことになるのだから。  彼は自らの祖父との因縁を終わらせるために単身戦場に向かった。  強くて、そして優しい彼だから、きっと自分一人でなんとかしようとしている。ギャスパーにたくさん守ってもらったから、今度は僕が守らなきゃ、と、まさしくそれはアリアが考えそうなことである。     
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