彼らは皆戦場にいた

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「俺が行きます。目立たないよう、一人で」  ギャスパーの言葉に、彼らは信じられないものを見るような目線を向けた。  しかし、ギャスパーは揺るがない。一刻も早く彼の思い他人のところに飛んで行きたくて、アリアの無事を確認したくて、あの夜を最後の夜にしたくなくて、そう言った。アリアのあの夜の焦りようからすると、アリアも自分の命がなくなることを覚悟していたに違いない。そんな悲劇は、絶対に避けたいところだった。 「危険です!お一人でなんて」 「時間がないんですカノンさん。一番危険にさらされているのはアリアだ」 「けれど、」  カノンがギャスパーを止めるのは当たり前のことである。単身で、王城と同じ規模の敵機関に乗り込もうとする人間の男が正気であるわけがないと思ったからだ。しかし、なお止めようとするカノンにギャスパーは言った。 「けれどもなにもないんだ!俺が一人で行くのが一番いい。目立たないし、隠れられる。速く動ける。言っちゃ悪いが、あなた方は足手まといです」  ギャスパーがここまで言ってやっとカノンは黙った。彼は戦闘に向かない男だと知っていたギャスパーだから、きつい言い方だと知りつつそう言った。     
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