彼らは皆戦場にいた

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 そしてこの能力は、極右の妖精族の国の地下迷宮に閉じ込められた際にギャスパーと外交官らの命を助けた。交渉が決裂し彼らの罠にはまったギャスパーだったが、一応と密かに盗みだし暗記していた脳内の地図をもとにし、彼は無事に祖国ヒューマリアへ帰還したのだ。  もちろんそんなことが出来たのはギャスパーだけだ。だからそれに比例して、こんな危険な任務にギャスパーは慣れれていた。 「もう覚えました。地図を持って行ったら見る時間が手間だ。不安になって確認している最中に敵に襲われたら厄介です」  その言葉に、アレグロもさすがに驚いてギャスパーを見上げた。しかし彼の表情には不安は一つも見当たらない。  ただただその瞳には、一刻も早くアリアを追いかけたいという意思の光が燃えていた。 「し、しかしギャスパー様はドラコルシアにいらしてから今日まで、王城から一歩も外に出られたことがない。元老院までの道はどうするのです!?」  慌てふためくカノンの言うことは最もだった。アリアの意向でギャスパーはまだ国民にお披露目されていなかったのだから、彼が城外に出られるわけもなかった。ギャスパーは未だドラコルシアの大地を踏んだことがないのだ。  しかしそれに、ギャスパーは笑みで返した。 「何、大丈夫です。元老院の屋根は悪趣味なほど派手な金色だ。青の屋根が多い中、真夜中でもそれは目立ちます」 「な、何を言って…?」     
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