覚悟の行く末

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覚悟の行く末

 アリアは一人、牛革の赤のソファに深く腰掛け、向かいに座る青年を見ていた。  ここは元老院。金色と赤の豪奢な家具と装飾にまみれた、元老院院長ノクターンの、広大な私室である。  深夜と明け方の間、アリアは一人城を出た。アレグロに聞いたことと、覚悟したこと。その全ては、吸った夜の息とともにアリアの胸にしまわれた。  最後の思い出になるかもしれない夜は中途半端に終わったけれど、アリアだってまだ死ぬつもりはない。万一のことを考えてあんな風に、この世に未練を少なくするために恋人を強請った事は後悔しているが、あの数時間はアリアの中で永遠となった。逃げ腰で弱い自分の、いつも通りの後ろ向きの予防線だったかもしれないけれど、あの時間がなかったら、きっとアリアは城を出られなかった。  依然、アリアはか弱い人型で過ごすしかなく、突発的なことが起きない限り、望んだ時に望んだ姿にはなれない。火も水も雷も土も、アリアの支配下から抜け出てしまったままだ。無力なのだ。  しかしアリアは、一つ気づいていたことがある。     
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