覚悟の行く末

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 アリアが怒っている相手は自分自身だった。ノクターンの知る、自己犠牲で命を簡単に捨てるアリアは正しく過去のアリアだ。そんな以前の、ギャスパーに命と志をもらう前の自分が嫌で嫌で仕方なくて、アリアは煙草のカスに爪を立てた。  全てを諦めて、この世の何もかもに未練がない自分が嫌だった。きっとギャスパーに出会うまで、小さな心臓は死んでいたのだ。 「僕はあなたに懇願と、それより先に命令しに来たのです」  過去を超えるためにアリアは言った。汗は絶え間なく溢れ出る。一人きりでこの祖父と対面することは、アリアにとってとんでもない重圧だった。しかし負けたくない。決して負けてはならないと、アリアは心を奮い立たせた。 「命令」 「そうです。ノクターンお祖父様。このドラコルシアは、僕が母上から譲り受けた国だ。だから僕は勅命を下す権利がある。…今日をもって、元老院の解体を命じます」  息を飲んだのはノクターンだ。こんな風に堂々と、真正面から、アリアがそう言ってくるとは思いもよらなかった。確かに元老院は、何の保証も約束もなく、ただ王の祖父であり仲間の多いノクターンの実力行使で成り立っている、あやふやな機関だ。しかし、あやふやだけれど根は張っている。アリアが反旗を翻したあの王元会議の時ですら、アリアはこんな風に、解体を命じたりはしなかった。ただ、元老院の立場を明瞭にすると述べたまでだ。 「…できると思うのか」     
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