覚悟の行く末

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 しかし次第に彼は、長い長い生の中で、自分が別の欲望を持つことに気がついた。アリアの誕生が、ただ欲望のために生きてきたノクターンのどこかを揺るがしたのだ。  そこまで思い出し、ノクターンはアリアの方を睨み返す。そんな命令を飲めるわけもないと言おうとしたところで、アリアは彼より一拍早く言った。 「懇願の方も申し上げます。ノクターンお祖父様、僕と一緒に、王城で働きましょう」  は、と、ノクターンの困惑と驚愕を混ぜた声が漏れたのと、アリアが立ち上がったのは同時だった。 「理由を説明いたします。まず一つに、お祖父様は今や僕よりこの国のことを隅々まで知っている。そして二つ目、あなたは国外のことにもお詳しい。対外貿易権を失った王城は、情報が枯れているのです。情報を分けていただきたい。最後に、」  スラスラと話すアリアは、まるで別人のようだった。王元会議の時の彼も凛としていたが、こんなに口数が多いわけではなかった。  ノクターンは、全く変わってしまった孫を見て、もはや何一つ彼の発言を予測できなかった。…アリアをこんな風に変えたのがあの人間だと思い至り、ノクターンの腹が燃える。  すうっとアリアは息を吸う。その頬には、わずかな微笑みすら浮かんでいた。 「最後に、お祖父様。あなたは僕がお好きでしょう。だから僕のそばで、一緒にいないかとお誘いしているのです」     
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