覚悟の行く末

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 見知った背中に安心し同時に情けなくも思い、アリアは、一度は永遠に会えないとすら思った恋人の名を呼んだ。 「ギャスパーッ…!」  アリアの言葉に、ギャスパーは小さく振り返る。ギャスパーはこの地下室の天井を剣で突きくずして、ノクターンの腕を切り落としながら部屋に着地した。  アレグロにもらった地図通りに進もうとしたら、待ち構えるように捌ききれなさそうな量の兵がいたためギャスパーは強硬手段に出た。暗記した地図に沿って計算し、地下室の上の部屋の床を探してぶち抜いたのだ。 「遅くなってすみません、お怪我はっ…酷いですね」  ギャスパーは恋人の痛ましい首元を見て悔しげな声を出した。しかしアリアがよく見たら、ギャスパーのその頬も茶の髪も服も血だらけで、ギャスパーの方がひどい怪我をしているのかとアリアは心臓が止まりそうになる。しかし、彼は前に向き直って言った。 「大丈夫、ほとんど返り血です!それよりアリア、この竜は!?」  ギャスパーの言葉にホッとしたものの、アリアはハッと前を見て体が震える。  そこに人型のノクターンはいなかった。咆哮をあげる金竜は前足を切り落とされた痛みに悶え、理性を失ったように、ギャスパーに突進してきたのだ。 「あ…僕の、お祖父様のっ、ぐあっ!」     
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