覚悟の行く末

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 ギャスパーに襟元を掴まれたと思ったら、彼に後方に投げられたのだとアリアは知った。直後アリアがいた場所には次々崩れてくる天井が積み重なり、ギャスパーが庇わないとアリアは下敷きになっていただろう。  目の前に瓦礫が積み上がり、狂ったノクターンに剣を振るうギャスパーの姿が隠されていく。アリアは懸命に足を立てた。腰が抜けただけで足は怪我をしていないから立てるはずだと、彼は歯を食いしばる。 「アリア、来ないで!この竜にはもう理性がない!」 「で、でも僕のお祖父様で、」 「君を殺そうとした竜だぞ!?っ、アリア危ない!」  ギャスパーは、アリアの上の天井が新たに崩れるのが見えて、咄嗟に金竜に背を向けてしまった。  しかしそれは、ギャスパーの犯したたった一つの過ちだった。  彼は腕の中にアリアを抱きしめた。アリアのすぐ横に、大きな天井のコンクリートが落ちてきた。  しかし、アリアの目に映ったものは絶望だった。声を出そうとした時には遅かった。  ノクターンのざっくり割れた口が、アリアの眼前に迫る。  次の瞬間、アリアに覆いかぶさったギャスパーの胴は、幾つものノクターンの牙に貫かれた。 「ア、リ、ぐフッ」  愛おしい男の体から肉片がこぼれ落ち、恋人の名を紡ぐ口からは血が噴き出す。  ドサっとノクターンの口から吐き出されたギャスパーの体は動かない。呻きすらあげない。穴だらけの体だった。     
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