覚悟の行く末

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 ドオン、と、大部分の部屋の屋根が落ちた。その振動に、アリアの体は少し浮き、同じように、血だまりの中のギャスパーも揺れた。  生きている人間ギャスパー・キャロルがただの肉塊になりゆくその様を、アリアはただ見ていた。見ていることしかできなかった。 「ようやく…」  金竜が言う。 「ようやく、成した。このいまいましい男を、アリアを変えた男を、私は…!」  ノクターンが白竜アリアに、原始竜に抱いたものは、決して恐れなどではなかった。どうしようもなくその白いその体を見た時、彼は惹かれた。魅力に虜になってしまった。その日からノクターンは、アリアの感情が自らによって揺れ動き、かき乱される様に満足を覚えた。彼を統制下に置くことがまるで憧れた原始竜をコントロールしていたかのようで快感だったのだ。  だから、アリアが別の何かに救われて変わっていく様が、ノクターンはたまらなく不愉快だった。権力に溺れる姿を隠れ蓑にし、彼の心はずっとその欲求と快感、そしてままならないアリアの変化と葛藤し、ギャスパーがドラコルシアに来てからというものその存在に苛まれ続けていた。  この歪みきった執着を好意とひとくくりにされることを、ノクターンは嫌がった。世界で一番憎いギャスパーの持つ感情と同じにされるなど、彼は虫唾が走る思いだった。     
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