覚悟の行く末

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 動けるわけもないギャスパーがまだ目を開き、ヒューヒューと細い息を吐いている姿にアリアは石像のように固まったままだ。声をかけたり近寄ったりすることも、アリアには出来そうもなかった。  しかし、ギャスパーはゆるりと笑った。うつ伏せで倒れこむ彼は、アリアの金の目をしっかり見て、最後の言葉を発したのだ。 「な…んどでも、生まれ、変わっ…見つ、け、」  最後まで、アリアへの愛おしさを乗せた響きだった。そ  れはいつかどこかで、ギャスパーの口から聞いたものだった。  アリアは思い出す。あの庭でギャスパーに強引にキスをされ、アリアが白竜に戻ってしまった時のものだ。ギャスパーはアリアの頼み通り目を閉じていた。それでも彼は、固く巨大なアリアの体を撫でて、愛おしいと伝えてくれた。その夜の些細な会話の中に混ぜられたその誓いは紛れもなく本気だったと知り、アリアは最後の涙を流した。  恋人の言葉の意図を知った時、アリアを襲ったものは果たして何だったのか、彼自身にも定かでない。  とにかく寒くて、寒くて寒くてたまらなくて、アリアは渾身の力で叫んだ。  暴風と爆発の中から姿を現した巨大な白竜は、地下室に収まり切らずに壁を抜いた。天井を抜いた。そして、元老院の土地ごと、夜明けの血の色の空に吹き飛ばした。     
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