物語を止めないで

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 カノンはギャスパーに向き直ってそう言ったが、変な音に遮られて首をひねる。グギュルル、ゴグリュルル、と低く竜のいびきのように鳴り響くそれが何なのかを察した三人は、同時に笑い出した。 「あっはっはっはっは!はははは、ッヒー、そりゃあそうですよねえ!お腹空きますよね、ギャスパー様」 「ふふっ、すみませっ…俺、五百年飯食ってないんでしょう?」 「っく、クク、そうなんですよお。アリア陛下のおかげで、生きていられてるけど…。はあー、笑った!私、厨房に言って何か作ってもらいますね!騒ぎになってしまうから、ギャスパー様が起きたことは言わないでおきますね」  アレグロは白の政務官のジャケットをはためかせ、青い髪を揺らしながら退室した。もう女装はやめたようで、幸福そうな彼の顔を見てギャスパーはホッと息を吐く。  ひとしきり笑った後、ギャスパーはカノンに、一番聞きたかったことから聞いた。 「アリアの様子は、どうなのですか」  五百年という時は人間のギャスパーにとって馴染みがないが、竜人族の感覚に合わせてみてもそれは約四年もある。長い時間だ。その間ギャスパーはアリアのそばにいられなかった。今のアリアを知らないのだ。  しかし、ギャスパーのほんの少しの不安をかき消すように、カノンは言った。     
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