物語を止めないで

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「お元気です。それはもう、風邪ひとつ引いていないほど。陛下はもうだいぶ、君主としてどう振る舞うかを心得たようですね。堂々としていてお優しく、白竜だからと彼を遠巻きにする新たな世代はなかなかいないほど。主君は国中に水路を広げましたよ。それと、チルカ先王陛下がなせなかった国交もだいぶ進んでおります。それに、北の痩せた土地の竜たちに救済措置を用意しましたね。人身売買の摘発も進み、もうほとんどなくなりましたし」  カノンは次々と、アリアの活躍を伝えてくれる。それは、懐かしいあの、王元会議前に話し合ったアリアの掲げた理想たちだった。  そう聞いて、ギャスパーの体は暖かい安堵に包まれた。今も昔もギャスパーは、アリアが幸せなら、もうなんだっていいのだ。 「良かった…。安心しました。で、俺はなんで生きているんです?」  啖呵を切って元老院に乗り込んで、結局格好悪いヘマをしたはずなのに、とギャスパーはやりづらそうに聞いたが、カノンは一瞬だけ言葉を詰まらせる。そして彼は、覚悟を決めてからギャスパーに告げた。 「あなたの体は、主君の鱗を取り込みました。原始竜の鱗は万能薬…怪我も病気も治し、時として体を若く保ち、寿命を延ばす効果があります」  やはりか、と、ギャスパーはその心で事実を受け止めて、一切の動揺を見せなった。宝石のように美しい腕の鱗に、彼は見覚えがあったのだ。それは無論、愛おしいアリアのものだ。 「だろうと思いましたよ。あの状態で怪我が治るわけもない。…私に現れた副作用は、この鱗と長い眠りだった、というわけですね」     
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