物語を止めないで

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 カノンはギャスパーに説明した。アリアはギャスパーが噛み殺されかけた時、即座に白竜の姿へとなったという。元老院の建物はアリアの体と叫びに弾き飛ばされ、明け方で眠っていた王都ニーアラ中の竜人族は起き出し、皆恐る恐る元老院に野次馬しに行った。  そこで彼らが見たものは、破壊された建物に、太陽にさらされ黒焦げになったノクターンの遺体だ。  そして、真珠の涙をこぼしながら、必死に恋人に、咥えた自らの鱗を飲ませようとする白竜アリアの姿だった。  カノンも追ってそこに行った。彼が見たのは、それは衝撃的な光景だった。  集まったニーアラ中の民たちは、アリアを恐れることをしなかった。昇り来る朝日の中、懸命に恋人の命を願ったアリアはだんだんと人型に戻っていき、竜の自分から抜き取った大きな白い鱗をパキパキと折って、小さな破片にしてギャスパーの口に押し込んだ。それでも飲み込まなかったギャスパーの、今にも千切れてしまいそうな体をアリアは膝に抱え込み、そっと口づけをしてようやく鱗を飲ませることに成功したのだという。  それから辛うじて生きていたギャスパーの体は光を放ってみるみるうちに元に戻り、肌には鱗が浮いたが、それ以外は元通りになった。やはり神業としか言いようのないその力を目にして、そしてホッと息を吐いて恋人の体を抱きしめたアリアを前にして、その場にいた竜人族は皆国王アリアに礼をとった。元老院の竜たちも同様だった。     
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