物語を止めないで

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「ヒューマリア国は、我がドラコルシアと一番の友好国ですよ!人間はすごいですね、最近は蒸気とかいうものを発明し、高速の列車を国中に走らせていますよ。まあ我々には必要ないですが、それを買い取って重宝している種族も多いですね」 「ジョーキ…。もう俺を知ってる人はいないだろうけど、国が元気なら良かった」 「何をおっしゃいます!?ギャスパー様は貴国で、伝説の英雄扱いですよ!」 「へっ?」  それから、カノンの言葉を聞いてギャスパーは笑ってしまった。  とにかく弱く外交に手を出せなかった人類の中で、鬼神の如き強さを誇ったある青年がドラコルシア王に見初められ国に尽くして結婚を果たし、彼をかばって眠りについたのち、人類はドラコルシアとの強い結びつきの末大発展を遂げることができた、などと物語風に語り継がれているらしい。なにひとつ嘘はないが、それは絵本にすらなっているというのだから驚きである。人類の寿命は未だ八十年ほどらしいから、五百年眠っていたギャスパーなどもはや架空の存在扱いなのだろう。  そういった逸話の主人公は大抵美形とか格好いいと言われているはずだから、人類にとって生きる伝説と化してしまったギャスパーは早急に体を取り戻さないと、無駄に痛い目を見そうである。死ぬ気で食べてひたすら筋トレだとギャスパーが闘志を燃やしていたところ、カノンは思い出したように言った。     
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