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「そうそう、主君ですがね。今ちょうどその、ヒューマリア国にいらっしゃるはずですよ」
「え、ドラコルシアにはいないのですか?」
「あいにく、タイミングが悪かったもので。向こうの国王がお誕生日ということで、主君は一週間ほど式典に参加しているのですよ」
「異形を招いて生誕式典…ヒューマリアが…」
あんまりにも記憶とかけ離れた祖国の華やかっぷりに、ギャスパーは頭を抱えそうになるが、せっかく目覚めたのにアリアと七日も会えないとは辛い。しかしアリアからしたら、目覚めないギャスパーの寝顔を五百年近く見ていたことになるため、ギャスパーはそんなことも言っていられないだろう。
「ギャスパー様、おっまたせしましたー!雑炊と春野菜です!」
厨房から飛んできたアレグロの控えめだけども浮かれたその声に、カノンとギャスパーは会話を止め、そちらの方を見た。彼はドアを閉めて、さっさとギャスパーに食事を運ぶ。テーブルをベッドサイドに引き寄せて、彼はカパッと鍋の蓋を開けた。
「消化に良いものをって言ったらこれが出てきたんですけど、食べられますか?オートミールの方が良かったですか?」
「い、いえこれが良い…うまそうだ。ねえ食べてもいいですかっ?」
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