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ある朝、ドラコルシア中の竜らは抜けるような春晴れの空を見上げていた。数日国を不在にしていた、白竜の国王が帰還すると知らせが出たからだ。南国ヒューマリアから王たちはまっすぐこの王都ニーアラに北上してくると聞いて、その空路の下に住む竜らはもちろん、他の地域の竜人族も、思わず空を見上げてしまう。
十ほどの竜の一団が見えた。黒に赤に緑に、竜らの鱗はそれぞれに鮮やかだったが、最も目を引くのはやはり、白銀に光る王の鱗だ。
もうすぐで、彼の治世は千年に達する。
この国で唯一苗字を持つ、アリア・ドラコルシアは国家を相続してからというもの、その人生、いや竜生は常に波乱とともにあった。
長寿の竜人族は、二千年前の衝撃的なアリアの誕生とそれからの内乱についてよく覚えている。そして、新たに孵った竜人族の子供らも皆、学校でアリアのことについて必ず学ぶのだ。
皆に恐れられ閉じ込められた原始竜の先祖返りは、たった一人の伴侶を愛し信念を貫き、今も彼の目覚めを待っていると、ドラコルシア国民は皆知っていた。彼らはアリアを誇りに思っていた。地方に水をもたらし国をさらに豊かに発展させ、平和と利他を求め続ける若きアリアは立派だ。アリアを恐れた民を恨まず常に国民に寄り添い苦境を乗り越えた国王に、未だ胸にくすぶる根源的な恐怖は拭えないけれど、それ以上の敬愛の念が彼らドラコルシアの竜人族の胸を占める。
「なあ、異形のお婿さんが目覚めたって話、」
「しいっ!それは陛下には秘密なんだから、黙ってなきゃダメよ」
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