物語を止めないで

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 解放された王家の庭は春の花が咲き乱れ、雪はほとんど残っていない。冬の間すっかり凍ってしまったろ過装置の水路に清い水は溢れ、涼やかな水の音が春の庭を満たす。花々も美しかったが、王の帰国を待った竜らがひしめき合っているから、彼らの髪や瞳、体の鱗がとにかく綺麗で、芝生の敷かれた大地の庭園は、宝石箱をひっくり返したかのような眺めだった。 「うわ、凄い綺麗だ」  ひっそりと、城の一階の回廊から庭園を見ていたギャスパーは、思わず感嘆の声をこぼした。彼は真冬にドラコルシアに到着しほんの一ヶ月だけ暮らして、そのあとは眠ってしまったからこんな景色を見たことがない。水路の技術を利用した噴水に光がきらめく。よく整えられた花々は生き生きと咲き乱れていた。 「そうでしょう。冬もいいですが、やはり氷が溶けるとこの城は大きく変わる」  隣のカノンが得意げに言う。相変わらず、彼はドラコルシアが大好きだ。 「で、陛下びっくり大作戦は…」 「アレグロ、その名前どうにかできません?ああそうですね、アリア陛下以外の外交団には、ギャスパー様がお目覚めだと伝えてありますし、陛下が到着されましたら、頃合いを見てお庭に出ていただきましょう」  アレグロとカノンの言葉にギャスパーは頷いた。  この五百年、アリアは笑顔を絶やさなかった。常に前を見て、涙も弱音もこぼさずに彼は王杖を握り玉座に鎮座し続けた。臣下も民も皆、彼が命を救った目覚めない恋人を心配しているとわかっていたのに、アリアはすべて微笑みのうちに不安を閉ざしたのだ。     
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