物語を止めないで

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 まるでアリアのその顔がギャスパーのようだと思ったのは、ギャスパーのことを知る竜ら皆である。恋人のことを愛し、同時にいたく尊敬していたアリアだから、きっとギャスパーのように強くあろうと彼はふるまっていた。朝晩毎日、眠るギャスパーに挨拶しキスを落とし、彼は信じて待つ日々を送ったのだ。  そんなアリアに、最大限の驚きと喜びを贈りたいと思ったのはこの城の竜のみならず国中の竜人族で、だから皆、カノンとアレグロが言い出したこのサプライズに同調した。アリアの本当に喜ぶ顔が見たくて、皆、今日は外遊帰りのアリアを庭園で迎え入れることにしたのだ。 「俺、できる限り食って運動したんですけどね…。まだ貧相だなあ」  アレグロと侍女らに着飾られたギャスパーは、それでも不安そうに拳を開いたり閉じたりする。そのジャケットは真っ白の生地に薄青と金糸で刺繍が施され、まるで祖国ヒューマリアの海軍のような装いだ。腰に下げられた剣はかつてノクターンを斬ったものだが、この五百年絶えず手入れがされていたようでピカピカである。 「そんなことないですよう。確かに以前のギャスパー様より一回り小さいですけど、起きたばっかりのギャスパー様より一回り大きいです」 「そもそも、たったの七日間で走れるまで回復したあなたはすごいですよ。そんなにしなくても、主君は喜ぶでしょうに」     
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