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アレグロとカノンはそう言うが、ギャスパーはやはり不安である。そうだ、恋とはこういうものだったとギャスパーの脳みそは懐かしい感覚を味わって、彼は二人に言った。
「もうご存知でしょう。俺は結構、格好つけで気にしたがりなんですよ」
苦笑したギャスパーの茶色の目元には、そばかすのように白い鱗が散っていた。アリアの体を取り込んだ証だ。
「陛下」
「あっ、陛下だわ!」
「アリア陛下がご帰還されたぞー!」
突然、庭は大きな歓声に包まれる。広大なそこは竜が十体着地しようと人型の国民が取り囲もうとまだまだ広かったが、彼らは自主的にアリアのためにもっとスペースを広げた。
ズシ、と、地面が震える。ずずず、ズズン、と音がして、だんだんと仕事を終えた竜らは、音も立てずに人へと変化した。
「さ、ギャスパー様」
カノンがギャスパーの背を押した。思わず彼を振り返ると、アレグロと寄り添った彼はニコニコと笑って、ギャスパーを見送ってくれた。
足が震えた。緊張のせいだ。背筋は綺麗に伸びているだろうか。微笑みを浮かべることは難しいが、情けない顔をしていないだろうか。不安だったが、ギャスパーにそれを確かめる手段はない。一歩また一歩と進み、回廊を出た彼は、サクッと青い芝を踏む。
気づいた竜らが、音もなく道を開けてくれた。さあっと広がるその道のたどり着く先はただ一つ。
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