物語を止めないで

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 巨大な白竜から少年の、いや、青年の姿に戻った、薄青の服をまとう彼。長い長い硬質な白の髪を一つに結び垂れさせたその後ろ姿はたくましく、あんなに細かった肩も腰もしっかりと大人のものに近づいていて、ギャスパーはただ立ち尽くし、溢れそうになる涙を抑え込む。 「アリア」  と、ギャスパーが声をかけたとき、すべてのざわめきが消えた。  水の流れる音と、風が木々を揺らす音。それだけに満たされた空間に、真っ白の国王が振り返る。  金のつり目は変わっていなかった。小さな唇も頬の鱗も、何一つ変わらないけれど、彼の背はかなり伸び、ギャスパーはもう首を曲げて話す必要はない。 「ぎゃ、ひゅ、っ」  しかし、美しい王がいっぱいに目を見開いた時にこぼした声のせいで、あたりに漂っていた妙な緊張感はすべてなくなる。  アリアは噛んだのだ。まるでギャスパーと初めて会ったあの日のように、アリアはまたも、ギャスパーの名をうまく言えなかった。  かああっと王の頬が真っ赤に染まったのと、笑いながらギャスパーがアリアに駆け寄り彼を抱きしめたのと、国民が一斉に歓声をあげたのが混じって、王都ニーアラはドッと沸き立った。  水路が揺れ、細かい水滴が池に降り注ぐ。皆、思い思いに気持ちを叫んだ。手を叩いた。中には空に飛び立つ者もいた。恋人の腕の中で何も言えず、ただただ幸せをかみしめているようなアリアに祝福の雨が降り、彼らの体を濡らしていく。 「ただいま」     
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