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ギャスパーは、騒がしい庭の中央で、アリアにだけ聞こえる声で言った。
「っ、お、遅いよ、馬鹿ギャスパー…っ!」
アリアは泣いた。五百年間、一人の時も我慢していた涙だったのに、思いもかけず次々と溢れ出る。ギャスパーに成長した姿を見てもらおうと頑張っていたのにすべて水の泡だ。
「ごめんなさい。生まれ変わった方が早かったかも」
「うっ、うるさい、なんてことを言うの!そうだ僕ずっと、ギャスパーに文句を言いたかったんだ。なんであんなにすぐに命を諦めたの。あんな、ノクターンに噛まれたぐらいで、あんなっ…!五百年も寝るなんて、僕、本当に…鱗を飲ませたせいで副作用とか、もし何かあったらって、本当に心配したんだから!」
嗚咽を我慢せずに泣くアリアに、ギャスパーはキスをした。申し訳なくて愛おしくて、言葉だけでは気持ちを伝えきれなかった。ちょうど鎖骨のあたりに来る、虹色の天使の輪を浮かべる頭から、次は丸い額へ。唇が目尻をたどり頬に着いた時、痩せたギャスパーの両頬を手で挟んで引き寄せたのはアリアの方だった。
キスをして、また抱きしめあった。
抱きしめたら同じ力で抱きしめ返してくれる。衣摺れが煩わしかった。しかし、力を込めてくれるのが嬉しかった。
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