恋の心臓、呼吸の果てまで

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『私たち、実は陛下に頼まれてここについてきたんですよ。遊びじゃないんです』 『こらっアレグロ!』  隠し事が面倒になってアレグロはついバラしてしまった。ギャスパーがかわいそうなのもあったし、何よりアリアが一番かわいそうだと思ったのである。長い青い髪をお団子にした彼は、怒ったカノンを気にせずこう言った。 『もうあと一週間しかお休みないですもんね、ネタばらししますよ。アリア陛下は、ギャスパー様とお二人でのご旅行が不安だったんですって。だから我々も呼び出されたのですよ…詳しくは言えないので、ご本人に伺ってください』  聞き捨てならない言葉の数々に、サングラスの下でギャスパーは目を泳がせながら考えた。なぜアリアがそんなことを言うのかわからない。不安など、何一つないはずなのに。  借り切った島のビーチは静かで、交代休み中の護衛兵が隅っこではしゃいでいた。じりじりとした日光はギャスパーから冷静さを奪う。彼は眉間をグリグリ揉んだ。アリアとこの間結婚式をしてヒューマリアからも祝われてようやく蜜月旅行、という流れなのに、びっくりするほどずっと、二人は清き夜を過ごしている。ギャスパーがさりげなくそういう雰囲気に持って行こうとしても、アリアがさらっと回避するのだ。     
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