恋の心臓、呼吸の果てまで

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 ギャスパーはどうしてもセックスがしたいわけではない。いや、したいのだが、何か言われれば我慢できる。アリアを優先したいから、全然余裕である。ただ、怖いとか気分じゃないとか、そういった理由でいいからギャスパーは訳が知りたかった。 「…と、いうわけです。アリア陛下」  はしゃぎすぎて疲れたという理由で、一日中室内でフルーツを食べていたアリアは、昼間の一連の会話を聞かされてその手から派手にスイカを落とした。赤い実がグシャアっとグロテスクに地面に散る。  バンガローの夜風は涼しくて、昔ギャスパーが漂着した人魚の島のような趣がある。ドラコルシア建築と全く違う、植物を使って編まれた建物の風景は二人の目を楽しませたが、ギャスパーはもはやそれどころではない。 「何故ですか。俺が嫌いになりました?」 「そっ、そそ、そんなわけないよ!アレグロの奴…あとでちゃんと言って聞かせないと…」  慌てふためいたアリアはブツブツ言いながらスイカを拾いフローリングの床を拭き、籐の椅子からガバッと立ち上がってギャスパーの方をニコニコと見上げた。南国刺繍の派手なクッションも麻の床敷きもスイカの汁まみれである。しかしここで掃除などしようものなら、きっとアリアはまた話をそらすだろう。     
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