恋の心臓、呼吸の果てまで

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 真顔でふざけたギャスパーにアリアがキャンキャン吠えた。ギャスパーは楽しい休暇を過ごしてはいるが、鍛錬のための海獣討伐依頼を片っ端から引き受けていたせいで、結構体はクタクタである。その上過去最大級の心配事もあるわけだから、ふざけないとやっていられない。アリアの方も密かに、こんな風にギャスパーと親しげに話せて満足を得ているのだから、割れ鍋に綴じ蓋な夫婦である。  アリアの関係なさそうな問いに、今夜は流されまいと決意したギャスパーだったが、一応真剣に考えた。百七十センチメートルほどくらいだった少年アリアは髪と一緒にぐんぐん背が伸びたから、と、ギャスパーはアタリをつける。 「うーん、一七八.五センチ」 「……ぴったり大正解だよ」  なぜ当たるのか、とアリアが若干引いた目線をよこすが、ギャスパーは涼しい顔で言った。 「抱きしめた時のあなたのお顔がどの辺りなのか覚えていますしね。竜人族はまだ成長期ですか?俺は確か一八七センチですが、抜かされたりするのかな」 「いっ、嫌だ!抜かさない!」  ギャスパーは何気なくそう言っただけだったのだが、アリアは思いがけず、必死の形相でギャスパーを見た。その顔が不安そうで目は真剣で、ギャスパーはぽかんとしてしまう。すっかり性格が変わってしまったかのようなアリアの口調だったが、何が気に障ったのかがギャスパーはわからない。 「それはまた、なぜ。背が高いのはいいことではないのですか?」 「ぎゃ、ギャスパーとかカノンはいいよ。でも僕は嫌なんだ」 「そりゃ、今のままでも十分お綺麗ですけど…」     
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