恋の心臓、呼吸の果てまで

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 噛み合わない二人の間に沈黙が落ちた。星がささめくこの夜で、ギャスパーはまたもアリアが何を考えているのかわからない。人の心を読むのが得意、だとか思っていた五百年前のギャスパーはきっと死んだ。 「…最後にその、え、エッチしたのは、僕がまだ一五一一歳の時だよね」  アリアは言う。彼の言う通り未遂だったがそうである。まだ一五一一歳、という言葉にどうしても引っかかってしまうヒューマリア産のギャスパーだったが、とりあえず、閨の話が出たので続きを促した。 「ええ、そうですね」 「その時僕はまだ小さくて細くて、子供みたいだったよね」 「まあ、そうですね。人間でいう十六歳ですからね」  そう思うと犯罪的だなと思ったギャスパーだったが、アリアの実年齢を思い出して考えるのをやめた。時間感覚について考えすぎると、彼の思考は宇宙に飛ぶ。 「あの時の僕のこと、すごくたくさん褒めてくれたよね。綺麗とか可愛いとか、たくさん」 「はい。綺麗で可愛かったのでね」  そう返すと、アリアはぐっと唇を噛んだ。金の目は所在なさげに揺れ、ちら、とギャスパーを見てはまたそらす。  凄まじい既視感がギャスパーを襲った。どこかで見たことがある、と思った彼だったが、すぐに思い出した。これは昔のアリアの表情とそっくりだ。     
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