ドラコルシアとヒューマリア

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「お寒いですか?今は大陸中央部の、狼の領空を飛んでおります。月の満ち欠けで姿を変える人狼ですね。人類は彼らと交流はおありですか?」 「いえ、全く…。何しろ大陸中央に行くには過酷な天壇山脈を超える必要があり、人間にはまだその準備がありませんもので」 「なるほど確かに…。彼らの国は上質な鉄鉱石を産出します。国交が開ければ人類にとってプラスだと、そちらの国王に進言されてはいかがです?山は、我々竜の背に乗って越えればいい」  カノンはそう言って、目だけでギャスパーを伺った。ギャスパーというと、思いもよらないカノンの申し出に目を丸くしている。カノンは至って真面目に言っており、この場だけのリップサービスというわけでもなさそうだ。  うまくやりますよ、とギャスパーは上司キングスレーに言い残してきた。その言葉の通り、うまくやらねばならない大変な任務だ。 (この結婚は、人類にとっては契約に過ぎない。けれど多大な利益をもたらす。竜人の後ろ盾が得られればいいさ、わざわざ竜を愛する必要もない)  ギャスパーはそう思って、ゆったりとした完璧な笑みを浮かべる。カノンの高速飛行にも慣れてきて、長年仮面を被り続けてきたギャスパーは、この先も任務のために、そしてただ生きるために生きるのだろうと覚悟を決めた。     
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