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やることはきっと変わらない。場の空気を読み政治の流れをつかみ、上の命令をこなす。そこに自分の意見はないし、別段理想もない。剣の才能とこの見た目や気性が役立つのなら、わざわざ死ぬ必要もない。どうせなら良い気分で生きたほうがいい。
「さ、ギャスパー様。もうすぐ到着でございますよ。ドラコルシアの王都、ニーアラが見えて参りました」
底知れない笑みのまま思考を広げていたギャスパーに、だんだん下降体勢になっていったカノンが言った。黒竜の体の下には山と海に囲まれた真っ白な街が広がっており、連なる建物の青のドームのような屋根がその寒さを際立たせるかのようだ。
街の端に、いっそう巨大な建物が見えた。積み木を重ねたような、アンバランスなそれは塔のように空に伸び、その建物の周りには何かがまとわりついている。
宝石のように輝く何か、伸ばした水飴のようなものが複雑に絡み合って城を飾っていて、ギャスパーはその美しさに目を奪われた。真冬の太陽に輝くそれの正体がわからず息を飲んでいると、青竜アレグロが気付いて説明をしてくれた。
「おそらく、ギャスパー様が見ているのが我々の王城です。主君はそちらに住まわれ、国の政治の多くは城で行われます。もう一つの分裂した政治機関、元老院は別の場所にありますが…」
「あの、城に巻きつく透明の大蛇のようなものは?」
すっかり空中に慣れ、膨大な汗も止まったギャスパーはアレグロに聞いた。
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