ドラコルシアとヒューマリア

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「ええと、あれは雨水ろ過装置の水路です。とはいえ、冬の間以外はああして凍ってしまうのですが…。城のてっぺんに雨水をためるところがあり、城を取り囲む滝や川のような装置に流されてろ過されて、ニーアラ中に生活水を引いています。ええと、ほら、あの壁のようなもの…あれが水路ですよ。町中にああして、高い壁が張り巡らされていて、緩やかに傾斜が付いていて、上に水が流れているのです」  アレグロの言葉になんとなくイメージが湧いたギャスパーが初めに思ったのは、竜でも生活水が必要なのか、ということだ。なんとなく竜は綺麗な湖で水浴びをしたりするものだと思っていたが、少し親近感がわく。人間の国でも海水をろ過したり、地下水脈を探し当てて井戸を掘ったりするのだ。このような高い壁の水路もいいアイデアかもしれないとギャスパーは感心する。 「美しい城でしょう!青と白の色合いに、中には多く大理石が使われております。この世で唯一、水を纏う城、と讃えられる我々の自慢の王城ですよ」  そう言ったのはカノンだ。国も国王も大好きらしい彼の性格はわかりやすく、人もよく、ギャスパーはまず彼と仲良くなるべきだと考えた。宰相という地位もいい。  ともあれ、近づけば近づくほどそれは不思議で美しい城だった。氷を絡ませ冷たく聳え、城の至る所に庭らしきスペースまである。地上ではなく、いわゆるバルコニー的なもののようだ。そこに植えられた木々には雪が積もり、それを見たギャスパーは今更のように寒さを思い出した。本当の冬というものに馴染みがない南国生まれだから、気候にも慣れなくてはならない。     
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