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「…さま、ギャスパー様、大丈夫ですか!?」
カノンの声に続いて、ふわっと、立ち尽くすギャスパーの肩に何かがかけられた。暖かいそれを反射で触ったギャスパーは、それが毛皮のコートだと気がついた。これ以上みっともない姿をさらしたら、自分のイメージのために良くないと、ギャスパーは冷たい酸素を取り込んだ。ようやく吐き気が落ち着いてきて、ギャスパーは薄く目を開ける。竜らは、ギャスパーを見下ろしているのだろう。
しかし目の前に立っていたのはあの黒竜ではない。一人の人間の男だった。
「え…」
ギャスパーはそう漏らして、思わず警戒態勢をとって腰を低くし、ぐるりと辺りを見渡す。雪の積もったバルコニー状のこの空間は真っ白の壁とその上に伸びる階段に囲まれ、上はどうやら城の廊下のようだった。
廊下からは、真っ白か真っ黒かの二種類の制服に身を包まれた人間たちが、興味深そうに、中庭のバルコニーを見下ろしていた。
「誰だ」
警戒したまま、ギャスパーは目の前の彼に視線を戻してそう聞く。
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