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カノンが男性だというのはギャスパーはなんとなく察しがついていた。なぜなら、彼の牙や爪や固い鱗、低い声に、女性的な部分など何一つなかったからだ。しかしそれはアレグロも同様である。鱗が青く瞳も青い、という以外に、カノンとアレグロの違いをギャスパーは見出せなかった。
ギャスパーの言葉にぽかんとしたアレグロは、次第にくすくすと笑い出した。青竜の時とは似ても似つかず、花のような声だった。
「うふふっ、確かに。人型だと雌雄ははっきりわかるけど、竜人の姿だとわからないですよね。我々も、大きくなってる時は知らない相手だと雄か雌かわからなくなってしまうのですよ」
「そうですねえ、見当もつきませんね」
アレグロに続きカノンもそう言ったのだからギャスパーはびっくりである。竜人族同士でも性別の区別がつかないとなれば、ギャスパーにわかるわけもない。
「私カノンは名前が名前なので、四千年近く生きてきて、雌に間違われたことは何度もありますね。同じ理由で、アレグロが雄に間違われたことも」
そんな雑談が始まったところで、中庭を見ていた者達はざわざわと騒めきだした。
とにかく強いとの噂があったギャスパーが警戒態勢を解いたことに安心したのか、じっとこちらを見ていた人々…もとい竜らは、制服を翻して次々と階段を降りてくる。ギャスパーの到着を聞きつけて、珍しい人間を一目見ようと野次馬しに来た城勤めの竜人達だ。
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