ドラコルシアとヒューマリア

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 白の制服が政務官と法務官、黒の制服が事務官と侍女である。彼ら彼女らは皆一様にきらびやかな鱗に体の一部を覆われ、それと同じ色をしたカラフルな頭をしていた。 「こら、侍女たちはギャスパー様の湯殿とお着替えの用意を!政務官は仕事に戻りなさい!法務官は書庫の資料整理が終わっていないでしょう」 「でもカノン宰相閣下、人間を見たのは数百年ぶりなのですよお。しかもこんなに格好良いお方!」 「ふふ、ドラコルシア男とはまた違ったお顔立ちだわ」 「しっかし、強くて真面目で格好いいなんて噂にたがわず、すっごく男前なお婿さんね。陛下もどうか、お心を動かされるといいのだけど…」  モノクロのワンピースの制服に身を包まれた竜たちは口々に、口元に牙を覗かせてそう言った。ギャスパーを囲むのはなぜか女性ばかりで、懐かしいその感覚にギャスパーは苦笑いだ。自分は竜人族にもモテるのか、と新たな発見をしたところで、結婚相手は凄まじく年上の男だと決まってしまっているので意味もない。無論、ところどころに鱗の見える彼女らも数千年単位で生きているのだろうが。 「いい加減になさい!ギャスパー様はこれから陛下と顔合わせなのですよ!まだ入り婿様のご到着は王城の機密事項です、決して外に漏らさないように!」     
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