ドラコルシアとヒューマリア

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 アレグロの一喝に、わらわらと集まっていた女性ばかりの竜らは解散した。人間の国は男尊女卑の気が多く、王城にこんなにも多くの女性が働いているのはギャスパーにとって珍しい光景だったが、風通しがいいらしいドラコルシアにギャスパーは少し好感を持つ。 「…失礼いたしました。ギャスパー様、急ですが湯を浴びられたらまずは陛下と顔合わせしていただきます。階段はお手間でしょう、上に飛んでいただいて…じゃなかった」  ふとカノンが言葉を切ったと思えば、一瞬後、ギャスパーの前に大きな黒竜が姿を現す。竜人が姿を変えるところを見たのは二度目だが、今度もその秘密はわからずじまいだ。 「私の背にお乗りください。階段の上までお届けしますよ」  今度は口元から見える牙に驚くこともその姿に遠慮することもなく、ギャスパーはカノンの体をつかみ鱗を蹴り、大きな背に乗った。浮遊感にも慣れたもので、彼はツノをとる。  大理石の廊下にギャスパーを下ろしたカノンはまた魔法のように人間になり、その身はしっかりと先ほどと同じ服を着ていた。スタイルの良さを際立たせる、シンプルな装いだ。  カノンとアレグロはギャスパーの前に立つ。中庭を見下ろしていた、揃いの服を着た使用人たちはたちまち遠巻きになり道を開け、ギャスパーの方に礼をとってみせる。人間の作法と少々違ったが、膝を折り胸に手をあてる仕草は明らかに目上の者への敬意を表すものだった。 「ようこそ、我らが王城へ」     
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