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日の射さない地下から引き上げられ、玉座に座らされた王子の金眼が輝いたところを、国民の誰しもは見たことがない。
成長した新王は、怒りをあらわにするには傷つけられすぎて、喜びを感じるには恐れられすぎた。その傷は白竜から翼を奪い、力強くも恐ろしい強大な原始竜の力をも奪うこととなる。
かくして、愛を知らないまま千五百年生きた白竜は、ある日ポツリとつぶやいた。
「僕を恐れない誰かと、せめて一緒に居られたら」
それならまだ生きてもいいけれど、そうではないなら王を辞めたい。そして、静かに死んでしまいたい。
そのつぶやきは王城を揺るがし、そして、ある人間の男を北のドラコルシアに呼び寄せる運びとなる。
しかし果たして、誰が予想できたろう。ほんの八十年しか生きないヒトの男に、王の白竜が、そしてドラコルシアの内政が揺り動かされるなどと。
歴史は数機の運命をたどる。ある結婚が、白竜を大きく変えるのだ。
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