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自分のせいで国が混乱に陥り、自分のせいで血が流れた。その上、自分のせいでこの王城は屈辱的に権利を奪われ、王城と比べれば生まれたばかりの組織である元老院に、政治の実権を握られた。そう思うたび、王の少年は死んでしまいたいほどの罪悪感と、呼吸への不快感を感じるのだ。
「それは心配しますとも。あなた様は、私が生涯を捧げた女王陛下、かのチルカ賢帝のご子息。王座を降りられるなどあってはならないことですからね」
先王への忠誠にほんの少しの狂気を混ぜたメッゾの言葉に、少年は体が震えた。
少年は気がついているのだ。メッゾは悪い竜ではない。しかし、ただ味方をしてくれるだけのいい竜というわけでもない。
このメッゾはただ、王家の血と先王チルカを愛するだけの竜で、少年の心などは見ていないのだ。
そんな彼が、敬愛する血を継ぐ少年の王位が揺らぐことを許すはずもなかった。
王杖の重さに眩暈がした少年王が、ある日一つわがままをぽろっとこぼしてしまったせいで、一人の人間の男の人生を狂わせることとなった。それを痛感し、王はこれから会いに来るというこの男に申し訳なくて、緊張に苛まれるのだ。
「あなた様が王でなくなったら、あの忌々しい元老院院長、ノクターンの手にこのドラコルシアは委ねられることになる。それだけは、避けねばなりません。ご要求通り、噂に聞くあの人間の男と結婚なさるのですから、もう二度と、」
「わかってる、メッゾ老。もう二度と、王を辞めたいなんて言わないから」
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